TTP賞応募作の修正版

(この文章はTrick-taking games Advent Calendar 2018の2日目の記事として書かれたものです)

 今年もくぼた屋さんにお招きいただきましていくつか寄稿させていただくこととなりました。よろしくお願いいたします。

 もうすぐ2019年が来ますね。そして平成が終わります。早いものです。早いと感じるのは私が歳を取った証拠だというのは百も承知ですが、早いものは早いんだから仕方がありません。
 すみませんが少し昔話をさせて下さい。私が学生(大学院生を含む)時代を過ごした1990年代は「パソコン通信」の全盛期で、まさに現在のSNSに相当する役割を果たしていました。パソコン通信の最大手はNifty Serveという会社が運営していたもので、電子メールのやり取りのみならず、同好の士が集まって情報交換をする「フォーラム」という掲示板のようなものがありました。ゲームのためのフォーラムも当然あって、当時の(多くは今でも)日本のボードゲーム界を代表する錚々たる顔ぶれが並んでいました。私はその中では「トランプ会議室」を中心に参加していたのですが(ちなみに「Cr」というハンドル名でした)、やはりそこも豪華な執筆陣が揃っていて、草場さんの記事や赤桐さんのルール紹介(これが後に『トランプゲーム大全』としてまとめられたわけです)などが多数発表されており、その情報量に圧倒されたものです。インターネットがまだまだ発達途上にあった時代、トランプゲームにのめり込み始めたばかりの私にとってはまさに宝の山でした。
 1999年の年明け早々からしばらくの間、私はそのトランプ会議室で「トランプの魅力」という文章を連載したことを思い出しました。あれから20年が経とうとしていることに気づいてショックを受けている昨今です。早いものです。

 それはさておき。ネットを見ておりますと、私が第1回TTP賞に応募した作品を実際に遊んで下さっている方がちらほらいらっしゃるようで、ありがとうございます。作者冥利に尽きます。
 と同時に、「『獅子と狛犬』がしたいからあと5人集めなきゃ」といった発言も目にしまして少々驚きました。トリテってのは3・4人用のものが多く、それだと仲間が6人集まった場やゲーム会などでは問題となります。そこで私はそういう状況に対応できるよう、いろいろな人数のゲームを考案してきました。TTP賞への応募の際も、15作も応募するからには2〜8人の人数に対応できるようにしたいという想いがありました。そういうわけですので「獅子と狛犬」をするために6人集まるというのは私としては何だか話が逆だと感じてしまいます。とりあえず人が集まって、5人だったら「五行相克」か「Banquo」、6人なら「獅子と狛犬」、7・8人なら「There Were None」、2人なら「フラーズ・ダルム」をどうぞ、3・4人ならお好きなものをお選び下さい、とまあそんな風に私としては考えております。
 去年のアドベントカレンダーの記事でも書いたことですが、TTP賞に応募した15作と去年のアドベントカレンダーで発表した「どんぐりと山猫」の計16作は私の頭の中では一まとめになっています。これでプレイ人数は2〜8人に対応していますし、メイフォローのゲームもあれば個人戦のゲームもパートナー戦もあります。2スートでランクが長いゲームも、逆にスートが多くてランクが短いゲームもあります。そんな具合に一通り揃っておりますので、全体を一つの「トリテ詰め合わせ」と見なしていただけましたら嬉しいです。
 とはいえまだまだ改善の余地があるものもいくつか含まれております。実際、応募した後で2人用の「フラーズ・ダルム」と8人用の「There Were None」の修正ルールを思いつきました。15作の中に2人用ゲームも8人用ゲームも1つしかありませんので、2〜8人の人数に対応しようと思うとどちらも重要です。というわけで今回は修正版のお披露目ということにさせていただきます。
 なお修正点を中心に述べますので(特にフラーズ・ダルム)、修正前のルールの詳細につきましてはTTP賞のサイト(下記URL参照)にありますオリジナルルールをご覧下さい。
https://drive.google.com/drive/folders/0B4tH_MPTec1lUGhkZDdKdU5aUzQ

1.【There Were None】
 TTP賞では7、8人用のルールを発表したわけですが、このうち8人用のルールを以下のように修正することにしました。

 通常のトランプからジョーカーと2を除いた48枚を使用します。ランクは強いカードから順にA、K、Q、J、10、……、3。またスートは黒と赤の2種類で、スペードとクラブ、ハートとダイヤは同じスートと見なします。同じランクのカードは先に出された方が強くなります。チップを48枚用意し、各自に6枚ずつ配ります。各ディールの最初に各自が小皿に2チップずつ入れます。
 ディーラーは左隣から順に時計回りに、各自6枚ずつになるよう配ります。マストフォローのトリックテイキングでプレイは時計回り、オープニングリードはディーラーの左隣です。フォローできなければ台札と別の色のカードを出すのですが、これは常に切り札となります。しかも台札と別の色のカードを出すときは、手札にあるその色のカードの中で最も強いものを必ず出さなければなりません。
 最も強いカード(切り札が出されていればその中で最も強いカード、出されていなければ台札と同じスートで最も強いカード)を出した人がトリックを取り、小皿からチップを受け取って、ディールから抜けます。トリックを取った人の左隣がリードして次のトリックを開始します。以下同様にして第6トリックまで続けます。
 最終第6トリックではスートに関係なく最もランクが上のカードがトリックを取ります。最もランクが上のカードが複数あった場合は、
(1) 最もランクが上のカードが2枚あり、それらが異なる色だったら、第3のカードと別の色のカードがトリックを取ります。
(2) 最もランクが上のカードが2枚あり、それらが同じ色だったら、第3のカードがトリックを取ります。
(3) 3枚とも同じランクのカードだった場合は、3枚の組み合わせが黒・黒・赤なら赤のカード、黒・赤・赤なら黒のカードがトリックを取ります。
 トリックを取った人と得られるチップの枚数の関係は次のとおりです。第1トリック=0枚、第2トリック=1枚、第3・4トリック=2枚、第5トリック=4枚、第6トリック=7枚。第6トリックで負けた2人は何も得られません。
 ディール終了時点でチップを1枚以下しか持っていない人が出た時点でゲーム終了です。この時点でチップを最も多く持っている人の勝ちです。ゲームが早く終わりすぎると感じるなら、各自が最初に持つチップを8枚ずつ、あるいは10枚ずつにするといいでしょう。

2.【フラーズ・ダルム (La Phrase d’Armes)】
 2人用のゲームです。通常のトランプからジョーカーと1つのスートのカードを全て取り除きます。さらに残り3つのスートから2〜6を除いた24枚一組を使用します。これらのカードは3つのスートのいずれかに属しているわけですが、さらに「上位札」(=A、K、Q、J)と「下位札」(=10、9、8、7)という2つのカテゴリーに分けることにします。ランクは強いカードから順に、上位札はA、K、Q、J。下位札は10、9、8、7です。カードには固有の点数があり、QとJが各1点、7が2点、それ以外は0点です。
 プレイについては修正前のものと同じです。
 ディーラーを交替しながら何ディールか行い、累計得点が先に25点を越えた(26点以上になった)プレーヤーの勝ちです。2人が同時に25点を越えた場合は点数の多い方の勝ちです。

 「フラーズ・ダルム」は私が作ったものの中ではおそらく「65」と並ぶ重量級トリテ、かたや「There Were None」はギャンブル系もしくはパーティ系の軽量級トリテで、対照的な両者ですが、もしよろしければ遊んでみて頂けると嬉しいです。
 他の作品も含め、今後ともご愛顧のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。

黒宮公彦