クリスマスプレゼント〜未発表作品をお披露目します

(この文章はTrick-taking games Advent Calendar 2017の25日目の記事として書かれたものです) 

 みなさん、メリークリスマス!クリスマスと言えばククですね!(違)
 いやだってホラ、トリテにクリスマスってイメージないじゃん?クリスマスに「トリテ」つったら「『トリの照り焼き』の略か?」って思っちゃうし。そういやクリスマスにローストチキン食べるの日本だけって噂は本当なんですかね……って話はさておき。
 今日は私からみなさんにささやかなクリスマスプレゼントがあります。未発表の作品を1つお披露目させて頂きます。
 実はこの作品もTTP賞に応募しようと思っていたのです。ところがTTP賞には「フォローしないとトリックを取れないゲームに限る」という応募条件がついていました。このゲームはその条件に違反することに気づき(言うなー!変態トリテちゃうわー!)残念ながら応募を見送った次第です。けれども私の頭の中ではTTP賞に応募した15作と今回お披露目するゲームの計16作がワンセットということになっておりまして「なーんか1つ欠けてるなー」とずっと感じていました。ですからこの機会にこうして発表できるのは大変嬉しいことです。お楽しみいただけましたら幸いです。

【どんぐりと山猫】
 「……このなかで、いちばんえらくなくて、ばかで、めちゃくちゃで、てんでなっていなくて、あたまのつぶれたようなやつが、いちばんえらいのだ。」
 どんぐりは、しいんとしてしまいました。それはそれはしいんとして、堅まってしまいました。
宮沢賢治『どんぐりと山猫』)

プレイ人数=3〜5人。まず3人でプレイするときのルールについて説明します。
1.使用するカード、ランクと点数、ディール
 通常のトランプから1つのスート全てと、残り3スートから2を除いた計36枚を使用します。ランクは強いカードから順にA、K、Q、J、10、……、3。3〜8のカードは「どんぐり」で、強いカードが勝つのだと主張します。これに対し9〜Aのカードは「山猫」で、弱いカードが勝つのだと主張します。
 カードには固有の点数があり、6とJが3点、5とQが2点、それ以外は1点です。
 ディーラーは左隣から順に時計回りに、各自12枚ずつになるよう配りきります。

2.プレイ
 オープニングリードはディーラーの左隣で、プレイは時計回り。マストフォローのトリックテイキングで切り札はありません。フォローできなければ何を出しても構いません。
 各自が1枚ずつ場に出した時点でカードを調べ、場に出された3枚のうちどんぐりの方が多ければ最も強いカードがトリックを取ります(スートは無関係で、同じランクのカードは先に出された方が勝ちます)。また山猫の方が多ければ最も弱いカードがトリックを取ります(こちらもスートは無関係で、同じランクのカードは先に出された方が勝ちます)。
*台札スートをフォローできるならしなければならないのですが、台札スートのカードが強いわけではないのでご注意下さい。

 トリックを取った人は場に出された3枚のカードを獲得し、自分の前に裏向きに置いておきます。その後この人が次のトリックのリードをします。

3.ゲームの終了
 12トリック終了後、各自が獲得したカードの点数を合計し発表します。その上で[(最も多く取った人の点数)-(自分の取った点数)]が各自のマイナス点となります(最も多く取った人は0点となります)。
 時計回りにディーラーを交替しながら何ディールか行います。9ディール行うことをお勧めしますが、短い勝負がお好きなら6ディールでも結構です。いずれにせよあらかじめ決めておいたディール数を行い、累計マイナス点が一番少なかった人の勝ちです。

<4人でプレイする際の変更点>
 通常のトランプから2を除いた計48枚を使用します。カードの点数は5・6・J・Qが2点、それ以外は1点です。
 各自が1枚ずつ場に出した時点で、場に出された4枚のうちリーダーの左隣が出した(=2番目に出された)カードを除き、残りの3枚のカードを調べてどんぐりと山猫のいずれの方が多いかを判断します。その上で、どんぐりが多ければ4枚すべての中で最も強いカード、山猫が多ければ4枚の中で最も弱いカードがトリックを取ります。トリックを取った人は場に出された4枚のカードをすべて獲得します。
 8ディール行うことをお勧めしますが、短い勝負がお好きなら4ディールでも結構です。何ディール勝負にするかはあらかじめ決めておきましょう。決めておいたディール数を行い、累計マイナス点が一番少なかった人の勝ちです。

<5人でプレイする際の変更点>
 5スート16ランクのカード、計80枚を使います。ランクは16(最強)、15、……、2、1(最弱)です。このうち1〜8のカードは「どんぐり」、9〜16のカードは「山猫」です。カードには固有の点数があり、4・5・12・13が各2点、それ以外は1点です。ディーラーは各自16枚ずつになるよう配りきります。
 各自が1枚ずつ場に出した時点で5枚のうちどんぐりと山猫のいずれが多いかを調べ、それに従ってどのカードがトリックを取るかを決めます。
 5ディール行い、累計マイナス点が一番少なかった人の勝ちです。

 ルールは以上ですが、作者として余計な話をさせて頂きますと。
 一番多く取った人の点数と各自が取った点数の差をマイナスの得点とするのではなく、もっと単純に各自が取った点数をそのまま得点とすればいいのではないか(そして一番多く得点した人の勝ち)、と思われるかもしれません。そうしなかった理由は以下のとおりです。このゲームでは(特にトリックの最後にカードを出す人にとって)どのカードを出しても自分がトリックに勝つことはないが、どのカードを出すかによってトリックを取る人が変わる、という状況が頻繁に起こります。このとき「どうせオレは勝てないんだから何を出してもいいや」ではなく「どうせ勝てないのならあいつに勝たせてやろう」というプレイが求められるゲームにしたかったのです。つまりこのルールだと、一番多く点数を取っている人以外の人たちは全員が臨時の連合軍となって、なるべくトップに有利にならないよう常にプレイすることになります。そういうわけで、得点計算は少々煩雑になってしまいましたが、こんなルールになりました。もっとも誰が何点取っているかなんて正確に覚えられるもんじゃないですけどね(笑)。
 またこのゲームは私の創作トリテには珍しくテーマ(らしきもの)があります。おかげで専用カードを作りたくなります(笑)。テーマを別にしても、専用カードがあるならトランプよりもずっとプレイしやすくなる(はずの)ゲームです。

 ちなみにTTP賞に応募した後で作ったゲームを2つ、練馬おやこボードゲームの会様のご厚意でサイトにアップしていただいております(ちなみに2つともマストフォロー練習トランプを使うゲームです)。よろしければこちらもご覧下さい。
https://sites.google.com/site/tambourinedc/cards#TOC--21

 ついでの話をもう一つ。何やら草場さんがまた楽しそうなことを企画なさっておいでとのこと。4スート20ランクの「イコサカード」だそうで。上に「5人プレイの場合5スート16ランクの計80枚を使う」と書きましたけど、同じ80枚なら4スート20ランクのカードを使った方が面白くなるかもしれません。他にもイコサカードを使うと面白くなるゲームがいろいろとありそうです。創作意欲が刺激されます。5月発売だそうで楽しみですね。付属するルールブックにはありがたいことに私の「獅子と狛犬」も収録していただく予定です。宣伝めいていて恐縮ですが私からもみなさんにイコサカードをお勧めしたいと思います。

 それではみなさん、どうぞよいお年をお迎え下さい。

黒宮公彦