本が出ます

(この文章はTrick-taking games Advent Calendar 2021の24日目の記事として書かれたものです)

 今年の11月半ばにくぼたやさんからこのアドベントカレンダーへの投稿を依頼されてお引き受けした時点では特に何もなく、例年通りに書くつもりでいたのです。ところがその後二つほど大きなことが起こりまして。第2回TTP賞一次通過作品の発表がその一つで、これについては前回の記事にしました。そこで今日はもう一つの方の話なんですが、何と言うか、正直言って私からお話しするようなことは特にないんですよ。ただ私の知らないうちに話はどんどん進んで行っているようで、他の人の記事を拝見しておりますと取り上げて下さっているものも見受けられますし、黙っているわけにはいかないのかなと思い直しました。それに何より「せっかくの機会なんだから宣伝しなくてどうするんですか!」ってニューゲームズオーダーさんに叱られるかもしれません。
 というわけで突然ですがご報告させて頂きます。私の書いた本が出ます。トリテの本なのでここで発表させていただきます。タイトルは『トランプゲームの源流 第1巻・トリックテイキングゲーム発達史』です。『クク大全』に引き続きニューゲームズオーダーさんから出して頂きます。すでにニューゲームズオーダーさんから予告が出されていますのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。詳細は下記サイトをご覧下さい。
www.newgamesorder.jp

 で、その内容なんですが、ごくかいつまんで言うと、基本的にはラブコメなんですがSFやホラーの要素もあり、ときどきグルメの話も出てくるトリテの本です!

 いや、この手のことって作者としては「読んで下さい」としか言いようがないじゃないですか。上記のサイトでは試し読みもできますので、どんな内容なのかどうぞご確認下さい。ワタクシ、毎年暮れになるとこのように下らない文章をいくつかアップしておりますが、頑張ればもうちょっとマシな文章も書けなくはないんですよ、たぶん。ただし「試し読み」以外の部分も真面目に書いているのかについては保証はできません。「試し読み」以外の部分がどうなっているのかについては実際に書籍を購入してご確認頂ければ幸いです。
 そうそう、今年のこのアドベントカレンダーの6日目、やういちさんの記事で「オミ」と関連して私のこの本をご紹介下さっていますが、私の本に登場するのはインドネシアの「オミ」です。スリランカの「オミ」については割愛すると明記した記憶があります。悪しからずご了承下さい。

 編集は『クク大全』に引き続き沢田大樹さんがご担当下さいました。「スクエアオンセール」などのボードゲームのデザイナーとして有名なあの沢田さんです。なんであの沢田さんがお前の本の編集なんぞせにゃならんのだ、と疑問に感じる方々も少なくないと思うのですが、この点に関して一番不思議に思っているのはかく言う私自身なのでして、なんであの沢田さんが私の本の編集を担当して下さっているのかさっぱり分かりません。人生何が起こるか分からんもんだのお、と『クク大全』のときからずっと感じております。

 ご注意頂きたいのですが、タイトルは「トリックテイキングゲーム発達史」よりも先に「トランプゲームの源流」が来ます。つまりトランプゲームが誕生して少しずつ進化していく様子を眺めてみましょうというコンセプトがまずあって、その上で今回はトリテに限定した内容となっておりますので、話はオンブルでストップします。オンブルより後のトリテの発達史については一切触れていません。そもそもトリックテイキングゲームという大きな流れの、まず水源を探り(実際には水源はよく分からないのですが)、そこから川となって流れていく本流だけに注目して書いた本なので、支流についてはすべてカットしました。本当ならオンブルに行く前に触れておかなければならないゲームがたくさんあるのですが、それらはすべて次の機会に先送りということにしました。なので実際には「初期のトリックテイキングゲームの発達史」にすらなっていません。正確には「初期のトリックテイキングゲームの一部のみの発達史」です。
 それでも書いているうちに「これ、すでに1冊の本になるだけの分量に達しているのでは?」と思ったのでニューゲームズオーダーさんにご提案させて頂き、沢田さんに編集して頂いたところ、予想通り製本したら300ページ近くになることが判明したのでした(私はWordで用紙をA4サイズに設定して原稿を書いているので、製本したら何ページになるのか分からないのです。1冊の本になる分量に達しているだろうな、くらいのことしか分かりません)。そこで第1巻として出版して頂くことになったのです。単に「第1巻」とするのではなく何か副題をつけた方がよさそうだったので少々強引に「トリックテイキングゲーム発達史」としました。
 ということは……? これって第2巻以降も出るの? 誰が書くの? いやいや私には無理ですってそんな。
 『クク大全』を出してからもう……6年? 6年になるんですか?! 早いもんですね。『クク大全』を出して一息ついて、それから今回の本を書くための調査を本格的に始めたので6年掛けて書き上げたことになります。ということは第2巻が出るとしたら早くとも6年後でしょうね……。いや実は第1巻は比較的調べやすいゲームが多かったので書きやすかったのですよ。ここからが問題で、「何だかよく分からなくて調べようがないけれども、それでも何が何でも扱わなきゃいけないゲーム」が少なくとも3つあります。なのでこの先に地獄が待っていることは自分でもよく分かっています。書けるのか第2巻なんて? 書けたとしてもはたして何年後になることやら、まったく分かりません。
 それでも上に書いた通りで「次の機会に先送り」にしたゲーム群が大量にあるのですよね……。第1巻ではトリテしか扱っていませんが、それでも先送りにしたゲームがたくさんあって、それにトリテ以外のゲームが加わるとなると……。しかもどれもこれも実態がさっぱり摑めないゲーム、名前のみが文献に登場するものばかりです。書けるのか? 真面目な話書けるかどうか自分でも分かりません。ただ、書くとしてもオンブル以後のトリテの発達史について書くつもりはありません。オンブル以後となるとそれはもはや「トランプゲームの源流」ではありませんので。
 実を言うと、話を一足跳びにオンブルまで持って行くかどうかでかなり悩みました。オンブルを取り上げるということは話が17世紀まで跳ぶということであり、そこに行く前に16世紀のトリックテイキングゲームについて洗いざらい調べてまとめるべきではないのか、と。ただそれをやると調査が永遠に終わらなくなる恐れがあるので、取りあえず第1巻ではトリテの本流の中の本流だけに話を絞り込むことにしました。そうなると着地点はオンブルでなければならなくなるので最終章でオンブルを扱うこととなりましたが、内容的にも時系列的にも話が跳んだというか抜けがあるとの感は拭えません。
 というわけで第1巻にはいろいろと抜けがあるので、どなたか第2巻以降を執筆して補って頂けると助かります。くどいようですが私は書けるかどうか自分でも分かりません。(ちなみに今のところ第2巻が書けるかどうか私にも分からないってことはくれぐれもご内密にお願い致します。ニューゲームズオーダーさんに知れたらエライことになります)

 まあ何にせよ第1巻が出るわけですが、第1巻はテーマがかなり偏った内容となってしまいました。上に述べたとおり「トリテの本流限定で発達の歴史を辿る」という、相当マニアックな内容です。この本の「売り」を挙げるとしたら次の点だろうと思います。
1.SFやホラーの要素はありませんが、もしかするとミステリの要素なら多少あるかもしれません。ただしほとんどの謎は解決されずに終わります(おい)。
2.トランプの歴史について調べたことのある人、とりわけそのテーマについて国内の文献だけを頼りに調査したことのある人にとってはわりと衝撃的な内容が含まれているかもしれません。ただし内容のほとんどは欧米では半世紀も前から、ものによっては150年も前から知られていることを並べただけで、新しいことはほとんど書いていません。欧米の研究者にとっては常識となっている事柄ばかりです。
3.何よりも私の空想と妄言を心ゆくまでご堪能頂けます。

 ニューゲームズオーダーさんには本当に感謝しております。『クク大全』だって「こんなマニアックな本売れませんよ。ウチでは出せません」という反応がふつうで、「価格を下げないと売れないから内容を一部削って下さい」と言ってもらえるならまだましな方です。それをニューゲームズオーダーさんは私の書いた原稿をそっくりそのまま出版して下さって、私は一切の妥協をせずに好き放題やらせて頂きました。こんなありがたい話はありません。
 今回の件にしても、提案のメールを送ったら即「出します。原稿見せて下さい」とご回答を頂戴いたしまして。ふつうだったら「出すかどうか検討したいので、まず原稿を見せて下さい」となるところですよね。私、よっぽど信頼されてるってことなんでしょうね。原稿を確認したらSFとホラーとグルメの要素があるラブコメだったらどうなってたんでしょうか?
 今だから言いますが、実は私にとって『クク大全』の最大の目標は「ニューゲームズオーダーさんに赤字を出させないこと」でした。それは今回も同様です。ご購入頂けましたら幸甚に存じます。
 正直に言うと学術書に近い本で、一般受けするような本でないことは重々承知しております。まあでもククと違ってトランプがテーマですから『クク大全』よりは一般受けするとは思うんですがね。『クク大全』は(これも今だから言いますが、実は)私は当初「100部は売れると思うが150部は売れない」と予想していたのです。それがお陰様で私の予想をはるかに上回る部数が売れたのだそうで、しかも騙された方々による被害者の会が結成されたという話も聞きませんし、ありがたいことです。ということは『トランプゲームの源流』も案外一般受けするのかもしれません。ただトランプはククと違って一般人にも馴染みがあるものではあるものの、『クク大全』がルール集だったのに対して『トランプゲームの源流』は歴史書ですのでね……(ルールも多少は載っていますが)。それでもニューゲームズオーダーさんは今回も結構な売り上げを見込んでいらっしゃるようで、当初の予定を変更してお求めになりやすい価格へと引き下げる決断をなさったようです。繰り返しになりますがご購入頂けましたら幸甚に存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。どうやら1月3日まで事前予約注文を受け付けているようです。紙の本としては2月末に出版されるそうですが、事前予約をなさった方には特典としてPDF版やEPUB版がダウンロードでき、そちらであれば今すぐお読みになれるということのようです。事前予約は下記のサイトからどうぞ。
https://newgamesorder.booth.pm/items/3496575newgamesorder.booth.pm

 ついでにご感想などお寄せ頂けましたら、書くかどうか分からない第2巻を書く気になって10年後くらいに出るかもしれません。こちらの方もどうぞよろしくお願い申し上げます。
 というわけで私にとって来年は「新しい本が出る年」となりますが、皆さんもよいクリスマス、そしてよいお年を迎えられますよう祈念致します。

黒宮公彦