TTP賞応募作裏話

(この文章はTrick-taking games Advent Calendar 2017の1日目の記事として書かれたものです) 

 みなさん初めまして、黒宮と申します。この度くぼた屋さんにお招きいただきまして筆を執ることとなりました(しかも5回も)。どうぞよろしくお願いいたします。またこのような機会を与えて下さったくぼた屋さんに感謝申し上げます。

 私事で恐縮ですが、先日発表のあったTrick Taking Partyゲーム賞2017では準大賞と審査員賞(ひげ賞)を頂戴いたしました。誠にありがとうございました。主催者のひげくまごろう様、審査員の草場純様ならびに新澤大樹様、また事務作業をして下さったひげさんの奥様に心から感謝を申し上げます。今回は自己紹介を兼ねてTTP賞応募作の裏話をさせていただきます。

 私がトリテの創作を始めたのは確か1992年ですから、今年で25年、ちょうど四半世紀となります(……と自分で書いて自分で衝撃を受けている。マジか、おい)。あくまでも趣味でやってきたので発表したいという気持ちもそれほど強くなく、加えて発表の場がそもそもなかったので、作っても溜め込んだままの状態でした。今回またとない機会が巡ってきましたので一気にド~ンと15作品も応募させていただきました。もう少し減らそうかとも思ったのですが、ひげさんの「応募数に制限は設定していないので、是非是非送ってくださいませ」というお言葉に甘えてしまいました。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるようで、無事に入賞を果たせましたことは身に余る光栄です。そして同時に、私の作品が意外と世の人に楽しんでもらえるものなんだということを教えられました。ありがとうございました。お陰様で少し自信がつきました。(それでも私の作るトリテは所詮、パーレットの作品群を初めとする過去のゲームのパクリでしかなく、「作品」と呼べるようなものではないと感じているというのが正直なところです。謙遜でも何でもなく、本当に)

 今回はタイミングもよかったんだと思います。私は2年前に『クク大全』という(控え目に言って変態的な)本を出版したのですが、その頃しばらくは「クク漬け」の状態で、無事本が出たときには「やっと解放された」という気持ちの方が強かったです。そして同時に「これでやっとトリテに帰れる」とも思いました。私にとってトリテは伝統的なカードゲームにのめり込むようになったきっかけであり原点であり、いわば故郷、帰る場所なのです。いい機会ですので申し上げますが、私がククが好きなのは確かですが、正直言ってトリックテイキングの方がずっと好きです(笑)。そんな「トリテに帰りたい」という精神状態のところにTTP賞の話が舞い込んだのでして、渡りに舟とばかりに飛びついたというのが実際のところです。 

 さて、せっかくアドベントカレンダーに書く機会を与えていただいたのですから、以下ぶっちゃけた話をします。

 裏話その一。15作も応募したので、審査に掛かる時間を考慮しまして、多くの作品は実は時間短縮ルールで応募しました。4人プレイで4ディール勝負となっているものは実際には8ディール、また3人で6ディール勝負のものは9ディールプレイすることをお勧めいたします。また「65」は5ポイント先取したチームの勝ち、「There Were None」ではゲーム開始時各自8(あるいは10)チップ持ちに変更するといいでしょう。

 裏話その二。入賞作についてですが、選んでいただいたのは大変嬉しく光栄なことではあるのですが、正直言って「そこが来るかー」と思いました。つまり私の目から見ると意外な作品が選ばれたというのが率直な感想です。1次審査通過作品を見てみたいと思います。 

【五行相克】

 言うまでもなくナポレオンを下敷きにして作ったものです。「コントロールできない」という批判があるようですが、おっしゃるとおりだと私も思います。もう少しコントロールが利くゲームとなるよう、トリック数とカードの枚数を増やした方がいいと私も思っていたのです。ところがテストプレイの時間がなかったのでやむをえず手を加えないまま応募しました。「まあいいや、とりあえず応募して、後で修正しよう」くらいに考えていたのです。まさか準大賞に選ばれるなんて!

 もちろん応募したルールの「トランプでできる」という点は大きな魅力なんですが、修正案も考えています。候補としては以下の3つがあります。

(1) 4スート18ランクの計72枚、11~18のカードは1枚1点。手札14枚。

(2) 4スート20ランクの計80枚、13~20のカードは1枚1点。手札16枚で常にパートナー1人戦。オープニングリードはディーラーの左隣(開始札なし)。

(3) 5スート15ランクの計75枚、10~15のカードは1枚1点。手札15枚で常にパートナー1人戦。オープニングリードはディーラーの左隣(開始札なし)。

 これらの修正案につきまして皆さんのご意見をお伺いしたいところです。 

【獅子と狛犬

 白状します。応募の際にひげさんがもし「応募数は最大10作品でお願いします」とおっしゃっていたらこの作品は応募していなかったと思います。確かに楽しいゲームかもしれませんけど、ヒネリがない。もう少し手を加えた方がいいなと考えていました。今から思えば、当時の私の方が間違ってたんでしょうね。

【65】

 自分で言うのもナンですけど重いゲームですよね。あ、しまった、今気づいたけどルールに「トランプ1組とビール4缶を用意します」って書くの忘れてた。重いゲームは飲みながらやるに限ります(おいおい)。作った本人が「ビール片手でなきゃやってらんねー」と思ってるゲームです(笑)。 

 私はトリテ創作に関してデイヴィッド・パーレットを神と崇めていますが、その神様パーレット様がカードゲーム(トリテに限らない)の創作に関して次のように述べておられます。「私の考えでは良いカードゲームとは、ふつうのトランプでプレイでき、ルールはとてもシンプルなのに、プレーヤーにたっぷりと考えどころを与えるゲームだ」と。私はこの言葉を常に念頭に置きながらトリテ創作をしておりますので、なるべくシンプルなルールのゲームを作ろうとしていますが、TTP賞に応募した15作の中でも上の3つと、それに「株価」はとりわけシンプルなゲームだと思っています。そういうのが選ばれたということですね。

 ……って、いや、あのですね、そういうシンプルなゲームってのは作るのが難しいんですよ。「作る」というよりも「ひらめき一発で出来上がる」ようなところがあって、そうポンポン作れるもんじゃありません。そういう「あんな感じのゲームもっと作って」と言われても困ってしまうゲームをピンポイントで選んでくるあたり、審査員の方々の炯眼には脱帽します。

 じゃあ私自身のお気に入りは何かと言うと、どのゲームもそれなりに気に入っているからこそ応募したのではありますが、1つ選べと言われたら「Banquo」ということになるでしょうか。作る側としては「プレイしたときの面白さ・楽しさ」よりも「システムの新奇性・必然性」を重視してしまいがちです(いやーでも「Banquo」楽しいと思うんだけどなー)。

 まあでもTTP賞のおかげで「別にヒネらなくていい、シンプルでいい」と改めて教えられました。今後も頑張ってなるべくシンプルなトリテを作っていきたいと思います。(あ、ルールはシンプルに越したことはないと思いますけど、でも必要なルールは揃ってなきゃ話にならないとも思ってます。パーレット様のゲームは必要なルールをちゃんと加えてあるところが偉大だと考えます)

 ゲームになりきっていないアイディアをまだいくつか温めているので、ゲームとして完成させた暁にはまた発表させていただきます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

黒宮公彦